ウールのお話しも3回目、1回目でウールの構造について、2回目でウールの吸湿性について、繊維としてのウールのお話しをさせていただきました。
今日はウールを詰めものにした布団の調湿(放湿)性のお話しです。
日本人の多くは掛け布団に羽毛布団を使っている人が多いと思います。
「羽毛(ダウン)は吸湿性が高いので、寝ている間のコップ1杯の汗をしっかり吸収します!」
「ダウンは調湿性も高いので、天然のエアコンのようです。」
と、どこのテレビショッピングや販売店でも同じことを言います。
ダウンの素材自体は確かにそうですが…布団にすると果たして???
それでは、羽毛布団と羊毛布団の調湿(放湿)性について実験してみましょう。
櫓(やぐら)の中に熱湯を入れた鍋を置き、その上から羽毛布団と羊毛布団を別々に掛けます。
そして、布団の中の温度と湿度をそれぞれ1時間、途中経過を見ながら計測します。
実験対象に選んだ布団は、
① 羽毛布団
詰めもの:ホワイトグースダウン93% 1.1kg入り
ふとん側:綿100% (サテン生地)ダウンプルーフ加工
② 羊毛布団
詰めもの:ウール(毛)100% 1.1kg入り
ふとん側:綿100% トリコット編み
布団の中身のダウンとウールはどちらも同じ重量(1.1kg)です。
それぞれの中身を覆っている生地(布団側)はどちらも綿100%です。羽毛ふとん用の羊毛ふとん用の生地の違いがあります。
もちろん2枚同時にはできないので…1枚ずつ、換気とエアコンで同じ室温湿度で実験しました。
結果は表のとおりです。
- お湯の温度は一定とはいかず、90℃(羽毛布団)と87℃(羊毛布団)のスタートで、60分後にはそれぞれ52℃、48℃とほぼ同じように下がりました。
- 布団の中の温度は羽毛布団の方が保温性があることがわかります。羊毛布団の温度が32~34℃の寝床内(布団と身体の間の空気)の最適温度を示していますが…人の体温は87℃もないので、これは参考になりません。
- 目を見張るのは湿度の変化、羊毛布団は15分後から湿度が下がり始め、最後はほぼ実験開始と同じ湿度近くまで戻っています。羽毛布団は60分経過しても布団の中の湿度は90%以上のままでした。
この結果からわかること。
あたたかいのは、羽毛布団。
同じ1.1kg入りの羽毛布団と羊毛布団ですが、そのふくらみ(厚み)の違いは最初から明らかでした。
調湿効果を持っているのは、羊毛布団
鍋の中の水温はどんどん下がり、湯気(水蒸気)が出なくなった15分後くらいから羊毛は吸湿しないで放湿したと思われます。
羽毛布団は中の湿気をほとんど外に放出することはできませんでした。
なぜ、羊毛布団は放湿でき、羽毛布団は放湿できなかったのか。
羊毛布団の生地が通気に優れているからです。湯気(水蒸気)を生地が通してウールが吸い、放湿する際にも生地が邪魔にならない。
一方、羽毛布団に使われている生地が気密性が高い(ダウンプルーフ加工)ため、湿った空気を中のダウンに送ることも、放出することもできなかったと考えられます。
もし羊毛布団も同様の生地だったら、今回の結果のような放湿効果はなかったと思われます。
布団の調湿性には生地が大きく関係していることがわかります。
湿度の高い日本の夏、夏用の薄い布団を使うなら…もちろんウールです。
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